[geometry-ml:01059] 【数学連携研究センター】 第 20 ・ 21 回数学連携サロン開催案内
TAKAGI, Yuki
takagi @ math.sci.hokudai.ac.jp
2010年 4月 20日 (火) 18:26:25 JST
各 位
北海道大学・数学連携研究センターでは
角大輝准教授(大阪大学大学院理学研究科数学教室)を囲んで
第20・21回数学連携サロンを下記のとおり開催いたします。
多数の皆様のご参加をお待ちしております。
**本案内を複数お受け取りの方におかれましては重複の案内ご容赦ください。
記
講演者:角 大輝(大阪大学大学院理学研究科数学教室)
第20回 4月26日(月)15:00-17:00 北海道大学理学部3号館204講義室
「ランダムな複素力学系における協調原理とカオスの消滅」
http://www.math.sci.hokudai.ac.jp/center/field/salon/rcimseminar_20.php
第21回 4月27日(火)13:00-15:00 北海道大学理学部3号館210セミナー室
「ランダムな複素力学系の極限状態に出現する複素平面上の特異関数」
http://www.math.sci.hokudai.ac.jp/center/field/salon/rcimseminar_21.php
参考文献:
H. Sumi, Random complex dynamics and semigroups of holomorphic maps,
to appear in Proc. London Math. Soc.,
http://arxiv.org/abs/0812.4483
4月26日要旨:
第n+1項が第n項の多項式で表される漸化式、いわゆる多項式力学系を考える
ことは数理生物学など様々な分野で非常に重要なことであるが、環境の変化
に応じて戦略(写像)を変える可能性も考えられるから、漸化式がランダム
に変わる、「ランダムな多項式力学系」を考えることは自然かつ重要である。
ここでは、初期値を複素数まで許すこととし、多項式は複素数係数も許すこと
とする。こうして「ランダムな複素力学系」を考えることにする。
通常の2次以上の多項式による複素力学系では必ずカオス的部分(ジュリア
集合)が現れることが知られているが、ランダムな複素力学系ではそれとは全
く異なって、たいがいの場合に、「平均化したシステムのカオス的部分がなく
なって有限個のアトラクタが生じる」ということを理論的に示す。
この「カオスの消滅」は、複数の写像らが、各写像はカオス的部分を持って
いるのに、お互いに協力・協調しあってカオスを消す、といった「協調原理」
によって起きるものである。カオスは消えるが、一般には極限の定常状態には
複数のエルゴード成分があり、「安定しているが多様性を失わない」という系
を形作る。なお、ランダムな実一次元力学系におけるカオスの消滅については
松本・津田による数値実験を用いた研究
「Noise-induced order」(J. Stat. Phys. , Vol. 31, No. 1, 1983)
が大変有名であり、それ以後、これまで多くの研究が主に数値実験に基づいて
行われてきていた。今回の講演の話は、複素数上であり、舞台設定が違うが、
カオスが消滅する、という点で似ているところがある。
ランダム実多項式力学系で今回の設定に乗ってカオスが実数上で消える、と
示せる場合もあるが、それが全てではない。ランダム複素力学系におけるカオ
スの消滅の正確な数学的主張、またそのメカニズムと背景などについて、話を
したい。
4月27日要旨:
悪魔の階段(カントール関数)やルベーグの特異関数は、実数上の2つの写
像によるランダムな実力学系の観点から、「+∞に飛んでいく確率の関数」と
定義しなおすことができる(この観点自体がほとんど知られていないほぼ新し
いもの)。また、ルベーグの特異関数を確率パラメータで偏微分したものは高
木関数の定数倍と一致する。
26日の話の極限状態において、これらの話の類似が展開されることを示す。
すなわち、有限個の多項式をそれぞれある確率で選択するある仮定を満たすラ
ンダムな力学系において、ある場所へ収束する確率の関数などを考えると、そ
れは複素平面上連続で、しかし非常に細いフラクタル集合上でのみ変化する、
という性質を持つことを示す。
また、これらの関数がその細いフラクタル集合の(ある良い不変測度に関し)
ほとんど全ての点で全微分不可能であることを示す。また、ほとんど全ての点
でのヘルダー指数をシステムの不変量を用いて表す。
つまり、26日の話において平均化したシステムの作用素を連続関数の空間に
作用させたとき、その極限において、これらの「複素特異関数」が出現し、そ
れらの全微分不可能性が示されることから、平均化したシステムについては、
連続性のみの観点ではカオスが消えているが、微分までこめた話では、カオス
性が依然として残りうる、ということを示す。さらに、このようにして出てき
た複素特異関数を、確率パラメータで偏微分することによって、高木関数の複
素平面上版が得られることを示す。
以 上
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高木 由紀(内:9455)
北海道大学 電子科学研究所
計算論的生命科学分野秘書室
数学連携研究センター
外線:011-706-9455
ファックス:011-706-9450
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