[geometry-ml:06155] 連続講演@九大数理(3/11-13+14若林泰央先生(阪大情報))

勝田 篤 katsuda @ math.kyushu-u.ac.jp
2025年 2月 26日 (水) 02:59:37 JST


各位,

連続講演@九大数理(若林泰央先生(阪大情報))
複数のメーリングリストに重複投稿しております.

以下の連続講演をお願いしております

題目:Oper, Dormant Oper, p-adic Teichmuller theory (仮題)

日程:2025年3月11日-13日(午前午後各2時間程度)+14日(予備日)
今のところ 午前10:30,午後14:30 開始予定

場所:九州大学数理学研究院(九大伊都キャンパス)ウエスト1号館 (対面講義)

ご関心をお持ちの方は,勝田までご連絡ください.その際,参加予定,検討中,興味はあるが参加は難しそうなどの情報も教えていただれば大変有難いです.

御連絡いただいた方に,第2報(3月初旬予定)以降の情報をお知らせいたします.尚,第2報が3月9日23時までに届いておられなかった方は恐れ入りますが,改めてご連絡いただければ幸いです.


                  九州大学数理学研究院

                           勝田 篤

                   katsuda @ math.kyushu-u.ac.jp




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内容に関して:

講演題目の「Oper」に関して,まだあまりなじみのない方もおられるのではないかとも思われるので簡単に(といってもかなり長くなってしまいましたが,)説明させていただきます.ただし,私もこの概念に関しては,最近知ったばかりなので,以下の説明には,誤解もありうるということをお含みおきの上で,ご覧いただくようお願いいたします.

1.Operとは,幾何学的ラングランズ対応に関連して,BeilinsonとDrinfeldが見出したもの[BDop]で,まあ平坦ベクトル束に(一般には非平坦な)フィルトレーションが入った対象です.これだけだと???となるかもしれませんが,リーマン面上の射影(平坦)構造が基本例です.つまり射影平坦だけだと一般には平坦にはなりませんが,1次元分増やすと平坦構造が入る(これはモデルとして複素射影空間P^n(C)を複素ユークリッド空間C^{n+1}に持ち上げることに相当します).
その他,リーマン面の磁場(曲率)を1次元持ち上げると3次元Heisenberg構造を持つ平坦束があらわれる状況が私が考えている場面であらわれました.

2.このようなものは言ってみれば,曲がった空間をより広い空間に持ち上げるとより簡単な平坦なものになるというようなものでいわゆる「岡の上空移行の原理」の一つと思います.同様な状況はChernによるガウスボンネの定理の内在的証明(すなわち,リーマン多様体上のある微分形式を積分するとオイラー数が得られるということを,その微分形式を接束に持ち上げると完全形式になり,ストークスの定理からその得点の情報を得て,大体Poincare-Hopfの定理のようなものからオイラー数が出てくる)とか,調和写像をループ空間に持ち上げ,そこでzero-curvature 
equationから考察するとかもそうです.
KdV方程式の場合は実際にOperが構成されています 
[BF].端的にいうとOperとは非線形と線形を結ぶ概念と言えるのではないかと個人的には考えております.尚,私自身はまだはっきりと理解しておりませんが,古典的な概念であるCartan接続とOperには類似性?があるらしいです.さらに上記に加えて[EL]も良い参考文献であろうとのことです.


3.題名のDormant 
Operというのは正標数p>0の場合のOperで,複素数体等の零標数の場合は,平坦束であれば,局所的には水平方向と垂直方向がきれいに分解できますが,正標数の場合はそれだけでは不十分な場合があります.その理由は水平方向への移動は平行移動と呼ばれますが,それを表す方程式(例えばKZ(Knizhnik-Zamolodchikov)方程式)はおおよそY'=AYという形ですが,特にそこにあらわれるAが定数行列の場合,標数0の解はAの指数関数e^{tA} 
= \sum_{k=0}^\infty 
(tA)^k/k!ですが,正標数p>0の場合の場合1/pがwell-definedでないので,e^{tA}は上記のべき級数として直接的には,定義できないことになります 
(cf.[E] ).

4.このことに対処するためp-曲率(p-curvature)という概念が必要となります.これはおおよそ平坦接続あるいは平行移動とp乗写像(p-Frobenius 
map)の両立からのずれを測るもので,これに関してGrothendieck-Katzのp-curvature予想(cf. 
[Kon] )というものも知られています.Dormant 
Operというのはおおよそp-曲率が零のOperです.

5.Dormant Operは,はじめp-adic Teichmuller theory 
[M]の中で導入され,若林[W]は代数曲線上のDormant 
Operの分類を行うとともにGromov-Witten不変量等との関連を見出し,数え上げ問題に応用しました.その他,関連文献としては[W2],[JP]等があり,講演でもこれらの内容に触れられる予定とのことです.


6.正標数あるいはp-adic等のNon-Archimedeanな幾何と通常の幾何(Archimedean)との関連について,いくつか列挙します.まず代数幾何学における森理論においてその核心部分に正標数への還元という技法が用いられており,複素幾何のみによる代替が可能であるかということは森氏自身の問題しておられることは著名です[MF].またOperに関連した話題としては,[BTCZ]は正標数への還元による[BD]の主定理のよりシンプルな別証明を与えています.その他にも[KS],[BJ],[LMPT]等があります.

ただし,[BTCZ]については講演で触れられる予定とのことですが,残りの
[MF],[KS],[BJ],[LMPT]は直接的には講演とは関連しないため,この項での参考程度に考えていただければと思います.


7.連続講演は,はじめに導入として通常のOper等の概念を説明された後,中心的内容としては,上記3~6に関連するものになろうとのことで,第2報として講演内容のより具体的スケージュール,参考文献情報等があらためて若林氏ご本人により,アナウンスされる予定です.

(暫定的)参考情報

(1)基本文献:

[W] Wakabayashi, Yasuhiro
A theory of dormant opers on pointed stable curves.
Ast\'{e}risque No. 432(2022), ix+296 pp.


[M] Mochizuki, Shinichi
Foundations of  p-adic Teichm\"uller theory
AMS/IP Stud. Adv. Math., 11
American Mathematical Society, Providence, RI; International Press, 
Cambridge, MA, 1999, xii+529 pp.

(書評:若林泰央,「数学」76巻4号 2024年10月 秋季号 pp 425--431)

(2)その他の文献

[BD] A. Beilinson, V. Drinfeld Quantization of Hitchin integrable 
system, preprint available at:
  http://www.math.uchicago.edu/~mitya/langlands/hitchin/BD-hitchin.pdf

[BDop] A. Beilinson, V. Drinfled, Opers, preprint arXiv:math/0501398.

[BF] David Ben-Zvi, Edward Frenkel,
Spectral curves, opers and integrable systems
Publ. Math. Inst. Hautes \'{E}tudes Sci. No. 94 (2001), 87--159.


[BJ] Sebastien Boucksom and Mattias Jonsson, Tropical and 
non-Archimedean limits of degenerating, families of volume forms. J. Ec. 
polytech. Math., 4:87--139, 2017.

[BTCZ] Roman Bezrukavnikov, Roman Travkin, Tsao-Hsien Chen, Xinwen Zhu
Quantization of Hitchin integrable system via positive characteristic
arXiv:1603.01327

[E] Pavel Etingof,
Periodic pencils of flat connections and their $p$-curvature
https://www.youtube.com/watch?v=q1AcDMRT7Ug&t=15s

[EL] Pavel Etingof, Henry Lie,
Hitchin systems and their quantization
https://arxiv.org/pdf/2409.09505

[JP] K. Joshi, C. Pauly,
Hitchin-Mochizuki morphism, opers and Frobenius-destabilized vector 
bundles over curves,
Adv. Math. 274 (2015),  pp. 39--75.
https://arxiv.org/pdf/0912.3602



[Kon] Maxim KONTSEVICH, On Grothendieck's Algebraicity Conjecture and 
random matrices
https://www.bing.com/videos/riverview/relatedvideo?q=Kontsevich+p+curvature+youtube&mid=2FE96117106B806130892FE96117106B80613089&FORM=VIRE

[KS] Maxim Kontsevich, Yan Soibelman
Homological mirror symmetry and torus fibrations
arXiv:math/0011041

[LMPT] Jialun Li, Carlos Matheus, Wenyu Pan, Zhongkai Tao
Selberg, Ihara and Berkovich,
arXiv:2412.20754

[MF] 森重文・藤野修,「対談:森理論について森理論誕生から最近の発展まで」,
『数学』69 巻3 号,294-319,2017.

[W2] Yasuhiro Wakabayashi,
Arithmetic liftings and 2d TQFT for dormant opers of higher level
https://arxiv.org/pdf/2209.08528













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